恋が都合よく落ちてるわけない
「あのなあ、千鶴は、いったいどっちなんだ。俺のこと散々言っておいて」

「そうだね。私、何にもわかってなかったんだ」さすがに落ち込んでいる。同じ欠点を持った人間が、他人の欠点を指摘するんだもの

「現状は、
ちゃんと自分で把握出来てるんだな」

「ええ、なんとか」
そこまで、馬鹿じゃなくてよかった。


「で?どうしたい?」


「ここに残る…」恐る恐る言って見る。


「ダメだ」
彼は既に私の腕をつかんでいる。


「もう、大丈夫だって。ここに侵入したの陽子さんだったから」半分くらいの確率でそう思う。


「それ、100%正解ってわけじゃないだろ」

「私、仁志さんのことさんざん言ってたくせに、全然自分のことわかってなかった。ごめん、一人にして…私、あなたに慰められると余計惨になる…」



「そんなこと…お互い様だろ」

仁志さんは、ため息をつく。
彼は、私の馬鹿さ加減がわかってたんだ。

でも、私は、そんなに大人じゃない。

「違うよ。私は、そのままなんて出来ない。ごめんなさい…」



「千鶴?…君は、どっちが好きなんだ?」
彼は、難しい顔をした。

私は、答えられなかった。
かけ違えたボタンのように、最初から全部やり直さないと答は出ないと思ったから。


「もう、いい。勝手にしろ」

「ごめん、仁志さん」
私は、心にも無いことなんか適当に言えない。
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