恋が都合よく落ちてるわけない

「本当に、行くの?」

「行きます」

2つ返事で答える。




食べ物と、美味しいビールの
誘惑には、かなわない。


想像しただけで、胃にビールが満たされた感覚がよみがえる。



善は急げ。

パソコンの電源を落とし、
荷物を抱き抱えるように持つ。


ビルを出るところで、
須田さんが言った。
信号が変わったら一気に駆け抜けよう。

「走るぞ」

須田さんが、私の背中をポンと叩く。私は、須田に遅れないように、付いていく。早い。どんなスポーツやってたんだろう。



どしゃ降りの中、
二人で道路を突っ切って走る。





一応、傘を手にしてたけど、
全然役に立たない。



傘が煽られ、
二人してずぶ濡れになった。




いらっしゃいませ、


と威勢良く迎え入れられたけど、
店の中に、客はほとんどいなかった。



なので、この日は、やたら歓迎された。



でも、この時に飲んだビールは、
ほんと美味しくて、料理も美味しくて


後で同じ店に行って、
同じように注文しても、



不思議と同じ味がしなかった。



< 11 / 196 >

この作品をシェア

pagetop