恋が都合よく落ちてるわけない

熱いシャワーでさっぱりすると、頭がスッキリしてきた。
ふうっ 生き返った。

部屋の感じ、浴室の感じ、多分そのまま上に上がって来たのだろう。

多分、ここは、
昨日いた居酒屋の上のホテル。何となく見覚えがある。

どうやってここに来たのかは、まったく覚えてない。


バスルームを出て、
須田さん近づいてに言う。
一応。礼儀だし。


「シャワー浴びますか?」



須田さんは、服を着て、
ベッドの上で寝転んでいた。



私がシャワーを浴びてる間に、
コンビニで買ってきたのか、缶のお茶とコーヒー、とおにぎりが置いてある。


須田さんは、シャワーは後でいい、先に食べると言い出した。
私にも、こっちに来て、食べろと手招きする。

「どうして、
シャワー浴びないんですか?」
と、もう一度聞く。

「いい。後で」


「浴びましょうよ」


「一緒にか?」
須田さん、嬉しそうにいう。


「違いますよ!」



「じゃあ、本当にいいから、俺に構うな」



シャワー浴びてる間に
逃げようと思ったのに。


「残念だなあ」


須田さんは、チラッと私を見た。


「ふん」
と鼻をならして、
お茶のプルタブを開ける。

ふわあっと眠そうなあくび。



私は、彼が選ばなかった、
残りのコーヒーを飲んだ。
微糖タイプのいつも飲んでるやつ。
おにぎりも、いつものだ
…なんでだろう。偶然?まさか

「美味しい」


「変なやつ。それ、
自販機のコーヒーだぞ」

「いいの、この味好きだから」

自販機?今、自販機って言った?
どうして自販機なの?

時刻は、まだ6時を少し
過ぎたところだった。


「あっ、そうだ。
サンドイッチのお礼」
須田さんに向かって話しかける。

須田さんが、顔を上げる。
昨日の飲み代については、
忘れてるのかな?


「払います。今、食べた分も…」



「金でか?駄目って、言ったろ?
高くつくよって」
何か企んでるのか満面の笑。


「高くつくって、何するんですか。
まさか、淫らな真似はだめですから」



「じゃあ、淫らにはしない。
普通がいいか」
昨日のテンションのままだ。



「はあ…?」



くっくっと笑う。
からかってるんだ。



「とにかく、
君は、俺と一晩ベッドを共にしようと
部屋に来た女、だろ?」



「いえ、
サンドイッチとおにぎりの代金
を払いに来た律儀な女です」




「おもしろいな。お前」
さらに大きく笑う。
笑った顔は、結構好き。



「大変、光栄に思います」




「そっか、そりゃよかった」



須田さんは、
グッと私の体を引き寄せた。


しまった。また、
食べ物につられて近くに来ちゃってた。


気がついた時には、

須田さんは、
私をしっかり、つかまえてキスしてきた。


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