恋が都合よく落ちてるわけない
何してるんですか。

「離してください」
私は、須田さんから逃れようと、腕を突っ張る。本当にびくともしない。

須田さんは、私をつかまえたまま言う。
「シャワー浴びたら、
やるんだろ?ノーマルで」体重をかけてくるから、ベッドに押し倒されそうになるのを、必死に耐える。


須田さんの手が、私の身体の、
いろんな所を、さまよう。
缶を持ったままで、手が空いてない。
「ひどい、こぼすから、止めてください。ちょっと、どこ触ってるの」


「おかしいなぁ、昨日は自分から俺の手を胸に当ててたぞ」


「そんなことしてません。
ちょっと、待って。本気なの?」

須田さんはいつの間にか、ブラウスのボタンを外して、手を入れている。



「ただの昨日の続きだ、言ったろ、
お前の身体は、すごい好みだって」

侵入した手が、好きなように動きまわる。



「そんな口説き文句なんか
真に受けますか…」



「じゃあ、どう言えばいい?
好きなように言ってやるから、
言ってみろ」



「千鶴、愛してる。君なしではいられない
すぐに、結婚して欲しい…」
須田さんの手が、ピタッと止まった。


そんなに驚いた顔しなくても。
ここまで言えば、気持ちも萎えて、
すぐに諦めるだろう。


ぶっと、吹き出した後に
高らかな笑い声。

「お前。ひどいな、
ヤル気を無くすの本当に上手だな」


須田さんは、
殊のほかお気に召したようだ。



「私もう帰りますから…」

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