恋が都合よく落ちてるわけない

「西川さんの居場所いつから知ってたんですか?」

「須田君が教えてくれたの。
ちゃんと約束守ってくれたわよ彼」

奏がラジオの番組を、
音楽チャンネルに合わせた。

そしてボリュームを上げた。
会話が途絶え、急に眠気が襲ってくる。

陽子さんは、
すでに眠くなって座席に
横になっている。

私は、まっすぐ前の、
道路の白線を見ていた。

時々奏の視線を感じたけれど、
気づかない振りをしていた。

寝るまいとしばらく頑張っていたけれど、
記憶も途切れてきた。

高速を降りたところまでは、
覚えていたがいつの間にか、
眠っていた。

窓側にもたれていたはずの私の頭は、
いつの間にか、運転席に向けられ、
奏の顔と額をくっつけるようにしていた。

車は、走っていなかった。

奏の指が私の顔を優しく撫で、
時々大きな手でつつまれる。

唇に指を当てられ、
親指で何度も指でぬぐう。

何度も触れられるので、奏の指を振り払おうとしたら、後ろから声が聞こえた。
陽子さんの声だ。
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