恋が都合よく落ちてるわけない
カーナビの音声で、目的地に近いと分かる。
陽子さんが、西川さんに電話でして、
もうすぐ着くと伝えている。


私は、どうしたらよいのか、考えがまとまらず、まだ、寝たふりをしていた。


これだけ騒いでも、仁志さんは
会いに来たことを、これっぽっちも喜んでもらえなかったらとか…

陽子さん、
なんで余計なことしてくれたの…

今日、会いに行けば、
仁志さんの気持ちが分かる。

考え事をしてる間に、車は敷地内の駐車場に着いた。陽子さんが、だるそうに車から降りた。

奏も、トランクから荷物を出すために車の後ろにまわった。

私は、今がチャンスだと思って、ドアを開けようとした…が、開かない。

「何?これ…ええっ!?」

開かない!!

ドンドンとドアを叩いた。

奏が気がついて、こっちにやってくる。

建物から西川さんが出てきた。


私は、西川さんに向かって、
ガラスを必死に叩いた。

西川さんが気がついてくれたけど、
喜んだのも束の間、
呑気に手を振っている。
< 156 / 196 >

この作品をシェア

pagetop