恋が都合よく落ちてるわけない
仁志さんの部屋の前…
ドアをノックしたけれども、何の反応もなかった。
こういう時、陽子さんに言われてなければ、ドアの外に食事を置いたままにしておいたと思う。

陽子さんに、確かめろと言われて会いに来たけれど、仁志さんの前に出ると、やっぱり勇気なんて何処かに消えてしまう。

私は、お膳を持ったまま、途方にくれてしまった。いっそのこと、少し食べたことにして、下げてしまおうか。


ガチャっとドアが開き、中から仁志さんが出てきた。相当不機嫌で眠そうだ。

「朝御飯…」


「入って…」
彼に手渡して、部屋に入らないつもりでいた私は、あてが外れて、仕方なく彼について部屋に入る。

テーブル…
ベッドからかなり遠いけど。

「あの…食事食べられますか?」

「あんまり欲しくないけど、食べさせてくれるなら…」

「冗談で言ってるんですよね」
仁志さんは、ため息をついて笑った。というか、笑おうとして、途中であきらめみたいな顔になった。

「どうして来たの?」

まるで来なくてもよかったのにという表情で言われて悲しくなった。
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