恋が都合よく落ちてるわけない
「奏とは、何でもないし、
何かしたいとは思ってない」

「君は口ではそう言いながら、奏に好きなようにさせてる」
なんだ、やっぱりすねてるんじゃない…

「そんなつもりは、なかったの。ごめんなさい。」


「他には?私、あなたがそうして不満に思ってること全部聞きたい」
私は、仁志さんの前に座って、顔を近づける。

「君は、俺の事より、
手紙を大切にしてた…」

「何それ、そんなはずないでしょ?
そうだ。返してね。関係ないってすぐにわかったでしょ」


「返さない。あんなもの必要ない」


「私宛の手紙よ。
大変な思いして探しだしたんだから」


「何でまだ、あの手紙にこだわる。
好きなのか?西川課長のこと」

恥ずかしくて言えないけど、
実は…ラブレターらしきものも、
初めてもらったのだ。


「西川さんが、好きだからじゃない。初めてもらった手紙だからよ。指輪もそうだったの」


「はあ?」

「だから…恥ずかしいじゃないの。指輪をもらったの初めてだから、渡したくなかったなんて…」


「なんだって?君は、バカなのか?」

「課長のことなら、とっくにあきらめてる。私は、陽子さんの気迫に勝てなかったもの」
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