恋が都合よく落ちてるわけない
部屋に戻ると、中にとじ込もったまま、とりとめのないことを考えていた。

「こたえたなあ」

口に出したら楽になると思ったのに、いきなり現実を形にされて、余計に落ち込んだ。

お昼前、陽子さんが呼びに来て、
近所で取れた野菜を洗って、
お昼に食べると言うので、陽子さんの指示に従って、専務と私は、野菜を洗った。

「千鶴ちゃんは、明日までいるよね」

「いいえ。お昼いただいたら、
帰ろうと思います」

ここに居ても、
彼の態度は変わらないだろう。


何でもいいから、一人になりたい。


「どうして?それじゃまだ、仁志も奏君も、運転出来ないんじゃ…」


「いいんです。電車で帰ります」


「えっ?ちょっと待って、
せめて明日の朝なら、
私達だって帰るでしょ?」


「すみません、用事できたので、
先に帰ります」


「それは、構わないけど」


「駅までなら、僕が送ろうか?」
専務が申し出てくれた。


「お願いできますか?
すごく、助かります」
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