恋が都合よく落ちてるわけない
「お昼食べたら帰るんだって?」
西川さんが心配して声をかけてくれた。

「はい。用事を思い出して」

「須田君、君に何か言ってた?」

「いいえ、具合が悪そうで、あまり話ができませんでした。それに、何かあっても、須田さんのせいじゃありません。私が悪いんです」

はは…須田さんとおんなじだ。怒ってるわけじゃないって言うのがよく分かる。


「西川さん、手紙ありがとうございました。あれで、少し気分が軽くなりました」

「ああ、かえって危険な目に合わせたね。奥田君があそこまでやるとは…」

「須田さんが、持って行った、メモリスティックは、役に立ちましたか?」

「須田が?いいや。受け取ってないけど」

「そんな…」

「あのデータは、もう、必要無いんだ。あの専務が関わってたのは、ほんの少しで、もうだいたいのものの裏はとれたから」

「じゃあ、無駄だったんですか?」

「違うよ。奥田が行動を起こしたのは、君が動いたからだよ」

「よかった。意味がなかったらどうしようと思って」

「須田がすねてるのは、君がまったくあいつを頼らないからじゃないのか?」

「私、あの人に信用ないんです」
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