恋が都合よく落ちてるわけない
荷物をまとめて、ポツンと一人になる。
仁志さんは、
私に何期待たんだろう。

期待しすぎたんではなく、多分、期待しなかったんだ。


私の方が、仁志さんに期待しすぎたのだ。仁志さんは、寝たいと言っただけで、好きだって言われたこともない。

仁志さんは、仕事のついでに会いに来て、私をからかって行くだけのことだ。

奏とどうなろうと仁志さんには関係ない。

ドアがノックされて、仁志さんかと、一瞬期待したけれど、声で陽子さんだとわかった。

「どうぞ」と言ってドアを開ける。

「さっき、元さんから聞いたけど、
帰るんだって?」

「うん」

「元気がないのね」

「そんなことないです」

「何かあった?」

「あっ、あの…
ありがとうございました。陽子さんの言ってた通りでした。お陰ですっきりしました」

「大丈夫?」


「はい。何とか」


「急に、何よ。変な子ね」

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