恋が都合よく落ちてるわけない
「お前、深雪の事、何で知ってる?」
昨日、何度も私のこと深雪って
間違えたくせに。
「昨日、酔って自分から言ってました」
私は、構わず帰る支度を進める。
「深雪の事は、何でもない」
「須田さんは、
私に説明する義務はありません」
彼は、指を伸ばして、
私に触れようとする。私は、後ずさって距離を置く。
「冷たいな…」
「私、冷たくないし」
「やっぱり、わかってないだろ」
「わかってます」
「悪い。
さっきは、君の名前を
知らなかったからだ。
言うべき名前が思いつかなかった」
「須田さん、あほですか…」
「名前なんか、
どうでもいいじゃないか?」
「良くないです!!
じゃあ、いいですか!!
私も、これからは、須田さんじゃなくて、
変態野郎って呼んでも」
「それは、あんまりじゃないか?
外でそう呼ばれたくない」
「もう、変態でも何でもいい…」
「なんだ、傷つくな …
何でもいいのか?ってことは、
本当に変態野郎でもいいのか…」
また、嬉しそうに笑う。
何だ?この人!
「何でもいい。次なんかないから」
須田さんが顔をあげた。
「それは、無理だよ。
俺はもう、君に関わってしまったから」
「どういう意味?」
「そのうちわかるよ」
この時、須田さんが言った事を、
私は、適当に聞き流した。
ただ須田さんの、
よく分かんない考えだと思って。
須田さんが言う通り、
須田さんは、
私の生活に既に深く関わっていた。
そして、須田さんは、その事をよくわかっていたのだ。