恋が都合よく落ちてるわけない
「どこへ行くつもりだ?」
寝ていたはずの仁志さんが、ちゃんと着替えて立っていた。
「起こしちゃった?」
「ああ、まったくだ。荷物持ってこんなところで何してる?」
「あの…ちょっと」
「ふ~ん」
私は、時間を気にして、何度も時計を見た。
「何か待ってるのか?」
「えっ?」
「タクシーなら、来ないぞ」
「どうしてよ」
「昨日、タクシーの予約の確認だって、電話があったから、断っておいた」
「えっ?」
「行きたいところがあれば、
俺が連れてく」
「わ、私、帰ります。フロントの人に言ってタクシー頼まなきゃ」
「何寝ぼけてる。
せっかくコテージに泊まってるのに、
何にも有効活用してない」
「有効活用って…」
「消毒しなきゃ。
奏がべたべたさわったところに。
早く行くぞ」