恋が都合よく落ちてるわけない


「もしもし…」

電話…鳴り止まない。こんなことになっても、声を聞きたい。
仕方ない、出るか。


「千鶴?よかった…まだ、会社」
やっぱり、あの人だ。


「はい」



「今、会えないかな」




「無理です。会う理由がないでしょ」



「僕が会いたいっていうのは?」



「一番、理由にならないです」



「ごめん」



「そうさせたのは、あなただから」




「千鶴?でも、
最後だから、僕に説明させて…」



「そんな言い方しないで。説明しようとしまいと、結果が変わるわけじゃない」



帰ろう…もう、
今日のノルマはクリアしてる。
片付けて早く帰ろう。



帰っても、
部屋の前で、
待ち伏せされるだけなんだけど。


「じゃあね」


通話ボタンを押してバックをつかむ。
フロアを出ようとした時、
呼び止められた。


「千鶴?」
目の前に彼が現れた。

「西川さん」


「来ちゃった。こうでもしないと会ってくれないと思って」


腕を取られる。



「離して…」



「嫌だ。離したら逃げるだろ?」



「当たり前よ」

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