恋が都合よく落ちてるわけない


「すまない。ちょっと熱くなっただけだ。千鶴、帰ろう」

西川さんががこっちに来る。
私は、後ろに下がる。



一瞬、須田さんが私の方を見た。


私の腕を捕まえてる手に力が入る。
「悪いけど、この人は渡せない」



「君には関係ない」



「あんたの方こそ、関係ないだろ?
もう別れたんだから」



「別れてなんかいない !!」



「でも、もう俺のなんで」
須田さんが、私をぎゅっと抱き締める。


「何、言ってんだ!!」



「これ、社内に公開するよ。
抵抗する相手を

無理矢理乱暴しようとしたって。
ただで済むと思ってんのか!!」



須田さんの勢いに押されて、
彼は、逃げ出すように出て行った。



いくら頑丈な須田さん相手でも、
何の反論もなく帰るなんて…



期待してたわけじゃないけど、
君が大事だって言うの、
やっぱり嘘だったんだろうな。


みっともなく去っていく姿を見てると、
本当に悲しくなる。


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