恋が都合よく落ちてるわけない
「おい、俺のこと忘れてないか?」

須田さんのガッチリした腕が、私の体をつかんだと思ったら、そのままゆすった。

西川さんがいなくなって、
須田さんは、私と向き合っていた。

そう言えば、私、この人をずっと探してたっけ。


「忘れてたのは、須田さんの方じゃないですか?」



「何度か、俺のこと思い出してたのか?
なんだ!電話くらいぐれればいいのに。寂しくなかったか?」

須田さんの手が、伸びてきて頭をぐじゃぐじゃにした。
頭をワシワシとするのは、
会社では、やめて下さい。


「いいえ」



「会いたかったって言えよ」

須田さんが
私をむぎゅっと抱きしめた。

「ちょっと、人が来たらどうするのよ」

「道をゆずる」

「ふざけに来たなら、離して下さい」

「ふざけてなんかいない」

「確かに。会いたかった。
でも、あなたの顔が
見たかったわけじゃないですから!
嘘つき!!

2度と私の前に現れないで!
っていうために
会いたかっただけです」
< 32 / 196 >

この作品をシェア

pagetop