恋が都合よく落ちてるわけない
走ろう…何とか振り切れるかも。
そっとエレベータに乗る。
扉が開いたら、ダッシュする。
ヒールのある靴なのが残念だけど、
走るのは好き。
早く!早く!
エレベーターが下につくのが、
待ち遠しい。
地下のフロアに、
須田さんが居ないか確かめる。
よし!
いない!
走るのなんて何年振り?
ペースをあげる。
ああ、なんて
気持ちいいんだろう。
階段で少しロスしてしまった。
でも、もうすぐ駅だ。
また、ペースをあげる。
もうすぐ改札。
「待て!!」
「ええっ!!」
ガクンと体が揺れる。
うそ。何これ。
大きな声と共に腕を捕まえられていた。
何?
何が起こったの?
「ばか野郎 ! ! 何しやがる」
私は、
須田さんの腕の中に
すっぽりおさまっていた。
須田さんの息が上がってる。
うそ…追い付いたの?
そんなはずない。
「お前、足、早いな。
くそ、運動不足、死ぬかと思った」
「何で、逃げるってわかったの」
「警備に、
そっちに行ったら、
連絡くれるように手配してた」
「だから、
何で逃げるってわかってたのよ…」
「ここ数ヶ月、毎日
ずっとお前のこと見てたからな。
まあ、素直に帰るとは
思わなかったけど。
言っとくけど、逃げても無駄だ。
家の前で待ってるだけだから」
何、この獲物を捕らえたみたいな、誇らしげな笑い顔は。