恋が都合よく落ちてるわけない
それでも、
腕を振り払おうとした私に、
須田さんは、
私の体を逃げ出さないように、ぎゅっと抱きしめた。それでもあきらめない私は、バタバタと手足を動かして、抵抗する。


「暴れるな…」
駅の改札の前で、
がっちり顔をつかんだ。

そして、
力ずくでキスをした。


何してるの?こんなところで…

あの…
みんな見てますけど…



「逃げないって、約束したらやめてやる」

息が荒いのは、走って来たから?
それとも、みんながみてるから?
そうだった、知り合いだって見てるかも…


「いや」



「ずっと…こうしてる気か?」



そっちが、私の頭を、
がっちり、つかんでるからじゃないの。



これ以上、人様の注目も浴びたくない。




けど、逃げたい。



「わかった。わかったから、やめて」




「もう、逃げるなんて考えるなよ」



心の中で、べェーっと舌を出す。



須田さんは、
どんなに私が逃げたしても、
どうにかつかまえて、
家に上がり込む気だ。



逃げ出さないって、約束したのに。
ずっと腕をつかんで離さない。
どうしてそこまでするの?


何かおかしい。




私の家の場所、どうして知ってるの?

私の家に、どうして
行かなきゃいけないの?




「大人しく、俺の言う事を聞いてくれ」




「何があったの?
何で私にこんなことするの…」





「千鶴、君は、
社内で起きた横領事件に関わってる」









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