恋が都合よく落ちてるわけない
頭がごちゃごちゃして、
いろいろ考えても、前に進まない。



須田さんは、
私の頭を抱えたまま
更にきつく抱きしめた。


「最初っから、
本気で疑ってなんかいない」



「どうやって、
パスワードを突き止めたんだろう」

うちのシステムは、ザルだけど、部外者が知るには、難しい。
だとすると、やっぱり内部の人間。




「設定は?誕生日にしてなかった?」




「もちろん」




「電話番号は?」




「違う」




「どんな風に使い分けてた?」




「毎月決まったやり方で変えるの。
マニュアル通り」




「ヤツは知ってたんだろう」



「ヤツ?知るチャンスは、
いくらでもあったと思う。社員なら」




「もう、大丈夫だから泣くな」


須田さんは、
泣き止まない子を優しく諭すように
キスをした。



混乱した私に、
須田さんがキスを何度もする。



「何で、キスなんかするんですか?」



「キスすれば泣き止むと思って」




「そんなことあるわけない…」



須田さんは、また私の口を塞いだ。



「ほら、泣き止んだ」



須田さんは、
私のパソコンを持って帰ると言い出した。
「何で?」

「強制はしないよ」

「どうぞ、そんなに使ってないから…」

「部屋の鍵は?」


「鍵?」


「そう、あいつにはやったんだろう?」


「それって、仕事で?」


「いや。個人的に」


「渡すわけ、ないじゃないですか」


「なんだ、ダメか」



「そんなことより、ちょっと待って、
まだ履歴!! 消してない」



「ダメ、触るな」


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