恋が都合よく落ちてるわけない
中途半端な気持ちで、残された私達は、
どちらともなく、
飲みなおそうということになり、
実加のマンションへ行った。


「あれは、惚れるね」
やっぱりナイトだと実加でさえ、うっとりしている。


「西川さんと連絡が取れないなんて」
私の関心は、別のところにある。

奥田さんは、自分には、一切見に覚えがないと言っていたが、西川さん単独で何ができるのかと疑問に思う。

優しい、間違いの嫌いな人だ。



「そんなの、わかんないよ。
千鶴を騙すくらいだから」
そう言われると、返す言葉もない。


「かわいそうに、千鶴」と実加。



「私、かわいそうなのかな」
確信が持てない私。
なんとなく、すっきりしない。



「須田さん、ずっと話し聞いてるのかな」
実加がぽつりという。


「そりゃあ、
1時間ってわけにはいかないよ」




「そうだね…」



「やっぱり、気にしてるじゃないの」



「してないって…」
須田さんは、仕事で話を聞いている。


「だって、心ここに有らずって顔してる」
私は、顔をあげた。

「ちょっと、ショックだっただけ。
ああして、須田さんに付き添われたのは、私だったかも知れないって…」

自分は潔白だと思ってても、
証拠があると言われれば、
どうにかできる自信がない。




「大丈夫だって…もし、
そうなっても、刑務所まで
毎日差し入れしてあげるから…」



「実加…」
おかしいよ。でも大好き。


その夜は、眠れなかった。

どうしても、胸がモヤモヤしてスッキリしない。

今更ながら、

自分の立場に気づいただけでなく、
別の人に優しくしてる須田さんの姿に
動揺してるのを、
私は、どうしても認めたくなかった。





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