恋が都合よく落ちてるわけない
「結局、教えてもらえないんですか?」


「困った人ですね」


「お金が動いてるとしたら、
私、何の責任も負わなくて

いいというわけには…
もし、そうなら覚悟がいります」


「ちょっと待って下さい。
どうしてあなたまで
何もかも自信を無くしてるんです?」

「すみません…私」

「大丈夫です。
仁志がその為に働いてるんですから。

そんな事心配しないで、
さあ、飲んで下さい。
仁志から、千鶴さんは、
お酒が強いって…」

「何でも話すんですね」


「あなたのことは、特に…」


「岡崎さん…私」


「心配事は、無くなりましたか?」



「いいえ。
すべて分かるまで
無くならないと思います。

でも、味方してくれる人がいれば
心強いです」



「それは良かった。
もう、遅いですし、帰りましょう…」



「岡崎さん…」



「ここで待ってて下さい」
岡崎さんのスーツの端をつかもうとした。


岡崎さんは、やんわりと私の手を離した。


帰りたくないって、
駄々をこねたらどうなるだろう。



「さあ、行きましょう。立てますか?」


「はい」


「さあ、つかまって」



私に向かって伸びてきた腕は、
岡崎さんの腕ではなく、
硬く筋肉質のしっかりした腕だった。

「立てるか?立てなきゃ、抱えるぞ」


「何?岡崎さんは」



「もう、車に乗ってる」




「荷物これだけか?」



私は、うなずく。




「じゃあ、早く立て」



「何で須田さんがいるの…」


「ゴタゴタうるさい」
立ち上がったと思ったら、
急に体が浮いて上下が逆さまになった。

ええっ?

「うっ、…」

私は、須田さんの背中を叩いた。

「気分悪いのか?」


「逆さまになったから」



「ちょっと待って」



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