恋が都合よく落ちてるわけない
「歩けますから、下におろして下さい」

一度下ろされたと思ったら、今度は抱き抱えられた。

「もうすぐだから、このままでいい」


店の外に出ると、更に注目を集める。
さっきの米俵のように、
担がれた方がまだ良かった。


「ちゃんとつかまってろ」


私は須田さんの首に、
腕をぎゅっと巻き付ける。
顔が近い。

体を離すと怒られる。



車の横に立たせ、ドアを開けた。
須田さんは私を後部座席に座らせた。



助手席には、岡崎さんが座ってる。



「家には電話したのか?」
須田さんが、岡崎さんに聞いた。


「ああ」


岡崎さんも、須田さんも途中、
何も話さなかった。
車の中は、しんとして静かだった。



車は幹線道路からそれて、
住宅街に入って行った。


しばらく走り続けて、
一件の家の前で止まった。
須田さんは、
車を空いている駐車スペースに停めた。
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