恋が都合よく落ちてるわけない
「で?何があった?」

岡崎さんの家を出て、
電車で帰ると言い張る私を、
須田さんが無理矢理車に乗せた。


「何も」


「何もないのに、貴司がいうはずがない」


「岡崎さんに助けてもらいましたから。
もういいです」

岡崎さんに助けてもらったことも話さなくてはならなくなる。


「貴司なら、頼るのか?」
これ以上ないほどの、
ふてくされっぷりで答える。

だから、電車で帰ると言ったのに。



「あの人紳士ですから」

一方的に言われっぱなしなのも、
シャクにさわるので、
ささやかな反抗をする。




「紳士だけど、キレイな奥さんがいるぞ」
キレイじゃなくて悪かったわね
いったい、なんなの?わざと怒らせようとしてる?


「それがどうしたんですか?」
プイッと横を向く。


「まさか、まだ諦めてないのか?」


やっぱりそんな事だろうと思った
岡崎さんのことは諦めろ、
っていいたかったんだ。


「何であんなことしたの?」


「そう言われると、
反省すべきことが多すぎて、
何のこと言われてるのか
分からないな。」

とぼけて答える。



「もういいです。私に構わないで下さい」



「怒ったのか?」



「これだけやって、
怒らないわけないじゃないですか」
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