恋が都合よく落ちてるわけない
「自宅で夕飯を食べていたら、本当に
仁志さんがやって来た」

「車前の道路に置いたままだから、
早くしろ」って、連行されるみたい。

私は、行かないとだけ言った。

「そうはいかない。君に選択肢はない」

そんなこと言われて、はい、そうですかって、割りきれるものではない。

「私、行かないよ。
だって、一緒にいたいっていう理由以外で、一緒にいたいって言われでも、
そんなの聞けるわけない」

「また、訳のわからんことをいう」


「帰って。私、行かない」


「だから、駄目だ。ここは、壁が薄いし」


「あなたのとこだって…」


「鍵、ちゃんとつけたぞ」


「誤魔化しても、だめ…」


「あの夜、あの台風の夜、
君の部屋に居たのは西川じゃない」



「どういうこと?」


「君の部屋に、侵入したのは、
誰だかわからないんだ」


「鍵は?」


「俺が持ってる」
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