恋が都合よく落ちてるわけない

「千鶴ちゃん」

須田父は、
私が行くと満面の笑みと
力強い握手で迎えてくれた。

須田母は、無言でうなずく。

私がしばらくここにいることを
なんと説明されているのだろう。

「お世話になります」
私は、ペコっと頭を下げた。



「お兄ちゃん、お嫁さん来たの？」

「えっ？」
私は…お兄ちゃんっていうのと、

お嫁さんというの、

のどちらを先に確かめたらいいのか
仁志さんの顔を見た。

駄目だ。妹を見るとデレッとして
しまりのない顔をしてる。
高校生ではない。大学生だろうか？


「初めまして、大島千鶴です」
と手を差し出した。

私も、嫁だなんて初めて聞きました。
何て皮肉は言わない。


「妹に会うのは初めて？」


「はい」


仁志さんが、挨拶は？
と世話を焼く。


「初めまして、薫子です」
にっこり、満面の笑顔。
清純そうなはにかんだ笑み。ストレートの長い黒髪。お人形さんみたい。

彼女の方も手を差し出した。


お互いの手がガッチリ合った。

ええっ？

ぎゅうぎゅうと力が入れられ、
私の手が雑巾みたいに絞られる。


すごい力!! 怪力だよ!!

うっ!!

私も腕力はある方だけど、
これは女じゃない!!

かわいらしい外見なのに、
なんだこれは？


「おい、止めろ、薫子」


「まあいっか、こんなもんかな」と薫子さんは、手のひらを、ぶらぶらっと振る。

私の方は、まだ手がじんじんしてる。