あなたの音に――――
あなたの音に
放課後の音楽室からは、時折ショパンの“雨だれ”が聴こえて来る。
切ないような、寂しいような。
それでいて、優しく包み込む音は、気持ちを落ち着かせてくれる。
私は、聴こえてくるメロディーに耳を傾ける。
「誰が弾いてるんだろう」
疑問に思っても、除き見てはいけないような気がしていた。
知ってしまったら、もう二度とこの曲を聴けなくなってしまうんじゃないかって。
そんな気がしていたから。
父と母が離婚をする。
こんな事は、よくあることだと思う。
今時、何一つ珍しくも無いし、同情されるようなことでもない。
気持ちのズレなんて、所詮他人なのだからあるに決まっているし。
子供に気を遣って無理やり一緒に居られたって、こっちが気まずいだけだ。
だから、離れるのは当然だし、反対もしない。
それだって、ここに至るまでに何年もかかったみたいだし。
両親にしてみたら、やっとというところだと思う。
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