あなたの音に――――
深く息を吸い込み吐き出して、頬を伝う涙を拭った時。
それを待っていたみたいに音が変わった。
しなやかに奏でられていた音が、力強い音に変わる。
この曲は――――。
「チャイコフスキー……」
それは、涙を吹き飛ばす音。
元気をくれる音。
勇気のわく音。
頬を伝う涙はやっぱり止まらないし、離婚なんてよくあること。
だけど、私はこの曲に救われる。
弾いている人が誰かもわからないけれど。
まるで私の気持ちを理解してくれたみたいに、チャイコフスキーを聴かせてくれるあなたに。
「ありがとう……」
まだ、大丈夫。
あなたの音で、私は救われる。
END