~Still~
シャワーを浴び、ルームウェアに着替えるとキッチンへと向かい、水を一口飲んだ。

そこからリビングを見つめると、薄明かりの中に、少しだけ颯太の頭が見えた。

エレナはソファに座る颯太を見つめながらそっと正面に回ると、身を屈めて颯太の寝顔を覗き込んだ。

先程から雨が降りだし、肌寒い。

「風邪引くわよ」

その声が異様に大きくて、エレナは自分で発したのにも関わらずギョッとし、何だか妙に可笑しくて、声をあげて笑った。

颯太はぐっすり眠っているのか、瞼ひとつ動かなかったから、エレナはそっと近付いて、至近距離から颯太を見つめた。

中高で整った顔。

この男は…違うのだろうか。

私を手厳しく裏切ったあの男と。

年下は、みんな子供っぽくて、何かあるとすぐ逃げるんじゃないの?
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