~Still~
エレナは、華奢な身体を他の客に当たらないように斜めにしながら、カウンターに近づいてきた。

エレナに気づいた客達は、その美しい顔に見惚れ、それから舐めるように全身を眺めた。

エレナは、そんな客達の眼差しなど何処吹く風で辺りを見回し、ゆっくりとこちらに歩を進める。

真っ直ぐ、俺の方に来る。

颯太は、思わずテーブルの下にしゃがみ込んで身を隠した。

しばらくするとガタンと音がして、誰かがすぐ前のテーブルに座る気配がした。

途端にバーテンダーが近寄ってきて、身を隠している颯太を見て首をかしげる。

……変だとは思うが……スルーしてくれ。

思わず人差し指を唇に押し当て、バーテンダーの眼を見つめると、バーテンダーは何もなかったように接客を始めた。

「ご注文は」
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