~Still~
「……」

店員?

突如として現れた人物はバーテンダーの制服ではなく、スーツに身を包んだ青年であった。

「こんばんは」

気を取り直したエレナは、斜めにしたままのシャンパングラスを更に傾けて、赤いお酒を飲み干すと、小さく頭を下げた。

それから眼の前の男を、静かに見つめる。

彼の短い髪は品のよいブラウンで、肩幅は広く、がっしりとした体格である。

顔つきは男らしく精悍で、切り込んだような二重瞼の眼はとても魅力的であった。
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