~Still~
その時である。

「エレナ」

声がした瞬間、エレナは両眼を閉じた。

颯太はエレナのその態度で、彼女にとって声の主が、招かれざる相手だと知った。

……この男は。

以前、エレナと来店していた男性客だ。

「エレナ」

二度目の呼びかけの後、エレナはゆっくりと両眼を開いて、声の主を振り返った。

「健斗」

3メートル程の距離をあけて、健斗は苛立たしげにエレナを見下ろした。

「帰国してたなら、どうして連絡してこない?!」

……帰国?

人の話、聞いてないのね。

来日と言って欲しいわ。
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