~Still~
彼女、という言葉に、響が突然真顔になる。

「お前、どうするんだ?エレナさん、1ヶ月でアメリカ帰るんだろ?」

「ああ」

「……引き留めないのか?」

「引き留めない」

「なんで!?アメリカと日本じゃ遠すぎるだろ」

「……彼女には女優としての夢があるんだ。引き留めるなんて出来ない」

颯太は、広い店内の何処を見つめるでもなく、落ち着いた声で言った。

「彼女の邪魔はしたくないんだ。
……多分、別れる事になると思う」

響は胸を突かれてテーブルに視線を落とした。

「……そんなの……辛すぎんだろ」

「一ヶ月の恋人だ」

颯太は切なく笑った。
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