~Still~
しかも代表取締役は容姿端麗で、辺りを払うような、光をまとったような、魅力的な青年である。

健斗の勤める東京店では、二十代から三十代の女性を中心に、神谷酒造の酒が飛ぶように売れた。

売り場の、神谷酒造の商品陳列エリアは狭く、数量的に多くはない。

それまではこれでよかった。

だが現在、完全に形勢逆転である。

今となってはこちらが、神谷酒造に商品の確保を願い出ているのが現状だ。

そこで健斗は考えた。

「おい笹田、次のフェアは、日本酒だって決まっただろ。
お前、神谷酒造行って社長にアポ取ってこい。フェアのスペシャルゲストとして、社長を会場に招く。
社長は今や時の人だ。
客も入り、商品も売れる。
普段より多く仕入れるかもしくは、客の予約を取り、うちが重要な取引相手だと印象付けろ」
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