~Still~
それからおもむろにサングラスを外すと、真っ直ぐにエレナを見つめた。

「俺、木佐隆也。ピッチャーやってる」

奥二重の涼しげな眼でエレナを見ながら、隆也は帽子を脱ぎ、頭を揺らして再びかぶり直した。

漆黒の髪がサラリと揺れて柑橘系の香りが辺りに漂う。

「打てるなら、打っていいぜ」

隆也がニヤリと笑った。

「ほんと!?」

「ああ。女だし、多少は手加減してやる」

「嬉しい!ありがと!」

エレナは、背の高い隆也を見上げるとニコッと笑った。

「エレナって呼んでいいか?」

「もちろんいいわよ!木佐君」
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