~Still~
「それがなんだよ」

「ゲストとしてお招きしたいとしか、俺言ってないっすよ。
先輩ってば、今になって二人の対談を目玉にするなんて言うんですから!」

健斗は高い天井を仰いでニヤリと笑った。

「いいじゃないか。ジイサンの方はさておき、客は、今をときめくイケメン社長、神谷颯太が目的なんだから。奴さえ会場で喋らせりゃ大成功なんだよ」

笹田は眉を寄せて首をかしげた。

「じゃあ、なんで雅丈一郎を呼んだんです?神谷颯太だけで良かったんじゃないすか?」

「いーから、お前はもう上がれよ。日本酒フェアは、明日から2日間だ。気合い入れろよ」

……神谷颯太だけじゃ、ダメなんだよ。

ヤツだけじゃ、ダメなんだ。

健斗は明日を思いながら唇を引き上げて笑った。
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