~Still~
雅丈一郎は、驚いていたが、それから満面の笑みで颯太を見た。

「嬉しい事を言ってくださる。
では、そのお返しといってはなんだが……サインをいただけるかな?実は、孫娘があなたのファンなんだ。
今日も本当は、『神谷さんに意地悪をしたら嫌だからね』と釘を刺されていたんだが……あなたの心意を聞きたいがゆえに少々いきすぎてしまって申し訳ない。孫娘にも怒られてしまうかもな」

会場が一気に和み、笑い声に包まれた。

そして、あっという間に15分が過ぎたが、誰もそれに気づいてはいなかった。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「先輩、大成功っすね!
いやあ、さすが楠木先輩っす!俺、最初はどうなることかとハラハラしたんっすよ!だって、雅丈一郎は、お堅い杜氏上がりの老舗蔵元だし、神谷社長は、今風イケメン社長だし。
水と油って感じの二人だから、正直俺、対談なんて上手くいきっこないと思ってたんっすよ。
それがどうですか!俺、感動しました。
俺も、楠木先輩みたいなカリスマバイヤー目指して頑張ります!」
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