~Still~
「そうでしたか。
……楠木さん、この度は大変有意義な時間を有り難うございました。これからも神谷酒造をよろしくお願いします」

健斗は、自分に笑いかけながら頭を下げた颯太をただ見つめた。

……この眼は、全て解ってる眼だ。

こいつはきっと、あの日ショットバー『Sou』で、エレナに悪態をついたのが、俺だと覚えている。

そしてきっとこの男は、俺の計画を解ってる。

なのに。

健斗は悟った。

違うのだ、俺とは器が。

健斗は、唇を引き結んでいたが、やがて深々と頭を下げた。

何も言えなかった。

無言で頭を下げ、彼に屈服するしかなかった。
< 220 / 351 >

この作品をシェア

pagetop