~Still~
玲哉は真剣な眼差しでエレナを見つめた。

「姉ちゃんの心には傷があるんだ。
あの日、ケイレブに付けられた傷が、姉ちゃんの心に影響してるんだろ。
その傷は、誰かに何とかしてもらえる類いのものじゃない。自分で治すしかないんだよ」

自分で治すしか、ない。

「姉ちゃんも分かってるんだろ、本当は。だから、神谷ってヤツから離れたんだろ?」

エレナは、玲哉を見つめた。

見つめたが、玲哉を通して自分の心の中を覗き込んでいた。

そうだ、玲哉のいう通りだ。

恋人と波風が立たない時はいい。

けれど、何かが起こった時、この傷は自分だけでなく、恋人までも苦しめるのだ。

そうよね。

自分の傷は、自分で治さなきゃダメよね。
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