~Still~
『知り合いから聞いたんだけど、あいつの職場はバーらしい。電話番号は……』

玲哉の情報を頼りに、エレナはイーストビレッジの目抜き通りを抜け、アベニューAを南へと進んだ。

南北に走るアベニューAは、エレナがニューヨークに住んでいた頃と、さほど変わりはなかった。

けれど、時間が時間だった。

午後1時過ぎ。

様々な店は大抵正午ぐらいには開くが、バーは閉まっている。

あれ?アベニューAじゃなかったっけ?

店の看板を見ながら5丁目まで来たときであった。

「エレナ…………?!」

懐かしすぎる声に、エレナの足が止まった。

振り向きたいのに、体がうまく動かない。
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