~Still~
「エレナ・リーダスだろ?」

声の主は、ガタンと音をたてて何かをアスファルトの上に置いた。

前方に広がる風景は、古びたビルと、その歩道の脇に枝葉を広げた背の高い街路樹だったが、エレナは後ろの人物ばかりが気になった。

振り向かなければ。

前に進むために。

「エレナだろ?」

エレナは深呼吸をして、ゆっくりと振り返った。










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「まさか、お前が受かるとはな!」

珍しくエレナがエージェントに顔を出すと、挨拶よりも早く、ジョーイが皮肉げに唇を曲げた。

エレナは見事、シェリル・シーマの主演映画、『Agrippina(アグリッピナ)』に出演が決定したのだ。
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