~Still~
喉の奥が押し潰されたように痛い。

胸の中に、鉛が詰まったように苦しい。

エレナは思わず眉を寄せながら、口を開いた。

「なんで、あんな事したの」

ケイレブは、ブリジットの瞳に暗い影を落として、カウンターを見つめた。

「……あれから、ずっと後悔してた。けど、あのときの俺は、ああするより他はなかったんだと思う。
……話しても、いい?」

エレナは、尚も冷たい瓶を両手で握り締めた。

それしか、出来ることがなかったのだ。

「うん、話して」

ケイレブは、カウンターごしの椅子に腰かけると、静かに話し出した。

「俺、恐かったんだ。いつかエレナに捨てられるのが。
君はいつも輝いていたのに、俺はそうじゃなくて……働きながら演劇学校に通ってたエレナに初めて出逢った時、神話の女神のようだと思ったよ」
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