~Still~
ケイレブは当時を思い出しながら、柔らかな眼差しでテーブルに置いた自分の指を見つめた。

「苦しかったんだ。エレナの稼ぎで生活をして、俺はただガラクタを作る日々。いつか、エレナに恥じない男になりたかった。
けれどある日、ドラマの端役のオーディションに受かったと嬉しそうに話す君を見た時、俺は思ったんだ。近い未来、君に捨てられる。エレナが俺から去っていくって」

ケイレブは、自嘲的に唇だけで笑った。

「君が仕事に出てる間、俺は酷く酔ってた。そこに、エマが君を訪ねてきたんだ。彼女は、君がドラマの端役を貰えた事を知らなかったんだね。俺、エマは親友だから知ってると思ってた。
エマは、僕に囁いたんだ。
エレナはきっとあなたと別れる。あなたは捨てられるわよって」

エレナは、早鐘のような心臓を感じながら、ケイレブを見つめた。

「俺は思わず、酔いに任せて君を悪く言ってしまった。
エマは、そんな俺を抱き締めてこう言ったんだ。
『私達から遠ざかろうとしているエレナに、私達を刻み付けましょう』って」
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