~Still~
運転の合間にこちらを向く颯太の視線に、エレナはドキッとしながら答えた。

「食べたよ。颯太くんは?」

「僕はまだですけど、家に食べるものがあります」

エレナは頷いた。

「コンシェルジュもいるもんね」

確か、颯太の住んでいた高級マンションはコンシェルジュが24時間常駐していて、食べ物も頼めたはずだ。

颯太は僅かに首を振った。

「あのマンションは、もう引っ越しました」

「そうなんだ……」

「僕があのコンシェルジュ付きのマンションに引っ越したのは、あなたに『ちゃんとしてる』のを見て欲しかっただけなんです。
僕には勿体ない物件でしたし」
< 313 / 351 >

この作品をシェア

pagetop