~Still~
何度も何度も角度を変え、唇を離しては互いに見つめ合う。

「僕の事……まだ好きですか?」

エレナは答えなかった。

答えられなかったのだ。

あの日、颯太のマンションを出る時の、自分の放った言葉が甦る。


『私はね、男になんか期待しないの。
自分にしか期待しないの!!』

『あなたの事なんて、好きでもなんでもなかった』


……身体を重ねたなんて、卑怯だ。

抱きあってキスをするのだって卑怯だ。

会って見つめ合うのですら、卑怯だ。

その上、『愛してる』なんて言う資格など、自分にはないのだ。

なのに、颯太を目の前にして、自分を止めることが出来なかった。

ああ!

なんて私は卑怯なんだろう!!
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