~Still~
エレナはクッと顔を上げると、両腕を曲げて組んだ。

「待たないでね、私を。
私は夢を叶えるまでは、誰とも結婚したくないし、子供だってもちろん要らない。
あなたには、あなたの未来がある。
あなたの人生を大切にしてね」

颯太は、凛とした眼差しのエレナを、ジッと見つめた。

やがて切れ長の眼を伏せ、口元を引き上げると、颯太は綺麗に笑った。

「ご心配なく。あなたに夢があるように、僕にだって夢がありますから」

エレナは息を飲んだ。

颯太くんの夢……。

そうだ、夢があるのは何も自分だけじゃない。

私に捨てることが出来ない夢があるように、颯太くんにだって、叶えたい夢があって当然だ。
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