~Still~
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
マンションに着いて部屋に入ると、颯太はエレナの腕を少し乱暴に引いた。

「あっ」

倒れそうになってヒヤリとし、エレナは思わず声をあげた。

けれど倒れず、颯太にフワリと抱きとめられる。

「 さっきの話、全部聞きました。
エレナさんが女優に未練がないなら、僕はもう我慢しません。
馬鹿丁寧な喋り方も、本当にもうやめです。
エレナ、」

颯太の声が掠れ、切なげに響いた。

「エレナ、俺、ずっとこの日が来るのを待ってた。ずっとずっと待ってたんだ」

「颯太くん……長い間、ごめんね」

颯太はエレナの髪に顔を埋め、大きく、本当に大きく息をついた。
< 343 / 351 >

この作品をシェア

pagetop