~Still~
「今夜は本当にありがとう。御馳走様でした。
……私、そろそろ行かなきゃ」

エレナは日本の小学校を卒業した。

それから渡米したが、小学時代の親友二人とは今も仲がいい。

ずっと連絡を取り合い、会えるときは必ず会い、咲希に関しては語学留学の際、一年間エレナの家にホームステイしていた。

そんな咲希は、ヨーロッパに服の買い付けに出掛けていて日本にいない。

亜子の家にも、生後七ヶ月の双子の赤ちゃんがいて、泊めてもらうのは気がひける。

つまりエレナは、誰の家にも泊まれないのだ。

ホテルを探さなきゃ。

その時、颯太がこう切り出した。

少し姿勢を正すと、真っ直ぐにエレナを見つめる。

「……先程の男性の家に泊まるんですか?」

エレナは眼を丸くして首を横に振った。

「まさか!本当は弟が借りっぱなしにしていたアパートに1ヶ月住むつもりだったんですけど、ちょっとアクシデントがあったものだから」
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