~Still~
エレナは、そんな颯太を見てにこりと笑った。

「大丈夫。歩きたかったの」

『旬彩・響』を出て、駅のロッカーに預けっぱなしのエレナのスーツケースを取りに行き、颯太のマンションまで歩いた彼女を、颯太は心配していたのだ。

「30分も歩いてないよ。全然平気。酔いも冷めたし」

エレナは左腕にはめた時計を見た後、颯太から受け取った水を一口飲んだ。

喉をコクンと鳴らしたエレナを、颯太はじっと見つめた。

その時、

「久々に、東京の夜景が見たいなぁ」

颯太は我に返って、慌てて口を開いた。

「ここからの夜景は最高です。こっちに来てください」
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