~Still~
その時である。

脱いだスーツの袖がサイドテーブルの何かに当たり、それがカシャンと音を立てて床に落ちた。

あっ……!

硬い質の音が、二人を熱の園から引き戻した。

しまった、これは……。

颯太は息を飲んでエレナを見た。

……何?

響いた音と、颯太の慌てた態度に、エレナは身を伸ばして音のした方を見つめた。

なに、あれ……写真立て?

部屋にさす僅かな明かりが、落ちたそれの表面に反射してキラリと光り、エレナは身をよじって床に手を伸ばした。

「エレナさん、それはあの」

エレナは、食い入るように拾った写真を見つめた。

これ……、嘘でしょ?
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