~Still~
「待ってください!今の僕じゃ駄目ですか」

颯太はエレナを追いながら声をかけた。

「ダメ」

アッサリと切って捨てるように言われ、颯太は思わずエレナの腕を掴んだ。

振り返ったエレナと視線が絡まる。

「何故ダメなんですか」

なぜ?

エレナは颯太を見上げた。

確かに、変わった。

バーを経営し、会社を設立して、実家の造り酒屋の酒を世界30ヶ国で販売しているらしい。

凄いと思う。

でも。

「どうして、あの時の不良少年だったって黙ってたの?」

「それは」

颯太は一旦言葉を切り、思いきったように言った。

「折を見て、ちゃんと言うつもりでした」

「私とセックスした後に?」

言いながら、氷のような眼差しを向ける。

「あんな風になると思ってなくて」
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